量的評価と質的評価


「大人数によるのであっても、小人数によるのであっても、主がお救いになるのに妨げとなるものは何もない」(1サムエル16:4)

教会の成長をどのように評価していくかは、色々と悩むところでしょう。わかりやすいのは、教会員数や教会の経済規模という量的に評価するうことでしょう。しかし、それが必ずしも、神のみこころにかなう教会の状況を示しているとは思われないということについては、誰もが直観的に理解しているところだと思います。実際、教会が人数的に大きくなったとしても、そこに成熟した信徒が少なく、絶えず衝突や分裂の問題を抱え、教職者や責任役員が疲弊する状況があるとしたら、そうした教会が神の目に見えてよしとされるはずがありません。
E.H.ピーターソンは、『牧会者の神学』という著書の中で、今日牧師と呼ばれる人たちの多くは、「企業経営者」の一群に変容し、彼らは「教会」という名の店を経営しているに過ぎないと指摘しています。極めて優秀な経営者で、大勢の顧客を魅惑し、人々から膨大な額の金を引き出し、輝かしい評判を取るが、彼らは牧会ではなく、宗教という商店経営をしているに過ぎない、というのです。
日本においても、1980年代以降、教会の成長を量ではなく質で評価する、いわゆる質的成長が盛んに言われるようになりました。しかし、日本においては、量的評価の考え方は根強く、実際、質的成長が何を意味するのか明らかではなく、さらに質的成長を主張するのは、量的に成長出来ない教会の言い訳に過ぎないと揶揄され、日本の教会成長に対する評価法は、未だ混とんとしています。

教会成長研究の盛んな米国では、ピーターワグナー以降、こうした問題意識への極めて真剣な取り組みがなされ、その質的成長の中身についての研究も進みある程度の成果が発表されてきました。パスターズスクールで取り上げる、NCD(Natural Church Development:自然に成長する教会)の評価法もその流れの中で生まれて来た質的評価の一つと考えてよいでしょう。結局、人数ではない、質なのだと言う時に、では何をもって質的な成長というのか、ということについてNCDでは、教会におけるリーダーシップ、賜物の用いられ方、個々人の霊的な熱心さ、組織構造の在り方、礼拝と讃美の在り方、小グループの機能、地域ニーズと教会の宣教の関係、教会の交わりの状態などの8つの質的特徴を評価し、教会の現状について共有していくのです。

大切なのは、教会の成長はもやはサイズの問題ではないということなのかもしれません。神が御業をなさるのに、教会が大きくなければならない、小さくてはだめだ、ということはない、まさに、「大人数によるのであっても、小人数によるのであっても、主がお救いになるのに妨げとなるものは何もない」(1サムエル16:4)という信仰にあって活動しているかどうか、実際小さな教会であっても、素晴らしい働きをし、地域にインパクトを与えている教会はあるもので、教会が小さいということは恥ずかしいことでも、劣等感を抱くようなことでもないことです。もし、恥じるべきことがあるとすれば、それは、教会に祈りも、聖書通読も霊的な導きもないことでしょう。

私たちが教会のこれからを語る時には、やはり教会の現状を正しく認識する必要があります。今自分たちがどのような現状にあるのか、そういう意味で、NCD以外にも質的評価の方法は種々あり、パスターズスクールのテキストである「ワークブック1」のP48-54 のレディネス評価もその一つとなります。ことに、人間の活動を評価する場合には、医療や、心理学の現場でもそうであるように、とりあえず、定評のあるテスト方法を複数組み合わせて行うものです。もちろん、牧会経験の深まりにより、そうしたものは不要であるという域に達する場合もあるのですが、パスターズスクールは、名人芸で物事を進めるのではなく、誰でも、考え方を理解し、自分で考え抜くことができるツールを用いながら教会形成支援を進めていくのです。(塾長 福井誠)